"How About Uke?" と "50th State Jazz"。きわめてユニークなアルバムであることは間違いありません。
でも一歩下がってジャズのアルバムとしてみると、どうでしょうか。少なくとも、名盤集にあげられるような作品ではありません。やはり「珍品」という扱いです。それに今なら、ウクレレでもっと手慣れたジャズ演奏をする人もたくさんいるでしょう。
それでも、この2枚の価値は不朽であると僕は感じます。
なぜなら、いわゆる「モダン・ジャズの黄金時代」に録音されたウクレレのジャズアルバムは、この2枚しかないからです。
ライル・リッツがこれらのアルバムを吹き込んだ1958年、1959年といえば、"Somethin' Else"(キャノンボール・アダレイ)、"Cool Struttin'"(ソニー・クラーク)、"Soultrane"(ジョン・コルトレーン)、“Kind of Blue”(マイルス・デイヴィス)などの歴史的名盤が次々と発表された頃でした。
ライル・リッツのこの二枚のアルバムを聞くと、あの時代にしか醸し出されなかった独特の「雰囲気」、時代の「熱気」とでも言えそうな空気が、タイムカプセルのように閉じこめられているのように感じるのです。
今、どんなに優れた奏者がウクレレのジャズアルバムを作ろうと思っても、「時代」まで再現することはできません。
あの頃のモダン・ジャズが好きで、かつウクレレを愛する僕のような人間からみると、この時代に作られたウクレレのジャズ・アルバムというだけで、他には代えられない価値を持った作品となるのです。