ライル・リッツ (Lyle Ritz) 研究

Lyle Ritz
Jumpin’Jim's Ukulele Masters: Lyle Ritz Solos,
(Flea Market Music, 2002)より


はじめに
(1)ライル・リッツの「二つの顔」
(2)ディスコグラフィー
(3)楽譜とDVD
(4)DGBE調弦

はじめに


僕がウクレレにのめり込むきっかけになったのは、ライル・リッツ(Lyle Ritz)というウクレレプレイヤーの2枚のアルバムを聴いたことでした。

How About Uke? 50th State Jazz
How About Uke?
(Verve, 1958)
50th State Jazz
(Verve, 1959)

衝動買いのような感じでウクレレを買ったものの、当時はハワイアン・ミュージックには関心が持てず、好きなジャズでウクレレを使っている人がいないかと思って検索してみたら、この2枚に行き当たったのです。
ウクレレでこんな音楽ができるの? と驚くとともに、その心地よい響きに魅せられました。そして、身の程知らずにも、俺もこんなふうにウクレレを弾きたい! と思ってしまったわけです。

僕は中学生のころからずっとギターを弾いていました。ビオラ・ダ・ガンバという古楽器も勉強していました。だからウクレレなんかはほんのオマケ、気晴らしのようなものと考えていたのです。
ところがウクレレを買って1年もしないうちに、僕はこの楽器に夢中になっていました。そのときいちばん一生懸命取り組んだのが、ライル・リッツの演奏のコピーです。

"How About Uke?" と "50th State Jazz"。きわめてユニークなアルバムであることは間違いありません。
でも一歩下がってジャズのアルバムとしてみると、どうでしょうか。少なくとも、名盤集にあげられるような作品ではありません。やはり「珍品」という扱いです。それに今なら、ウクレレでもっと手慣れたジャズ演奏をする人もたくさんいるでしょう。
それでも、この2枚の価値は不朽であると僕は感じます。
なぜなら、いわゆる「モダン・ジャズの黄金時代」に録音されたウクレレのジャズアルバムは、この2枚しかないからです。

ライル・リッツがこれらのアルバムを吹き込んだ1958年、1959年といえば、"Somethin' Else"(キャノンボール・アダレイ)、"Cool Struttin'"(ソニー・クラーク)、"Soultrane"(ジョン・コルトレーン)、“Kind of Blue”(マイルス・デイヴィス)などの歴史的名盤が次々と発表された頃でした。
ライル・リッツのこの二枚のアルバムを聞くと、あの時代にしか醸し出されなかった独特の「雰囲気」、時代の「熱気」とでも言えそうな空気が、タイムカプセルのように閉じこめられているのように感じるのです。
今、どんなに優れた奏者がウクレレのジャズアルバムを作ろうと思っても、「時代」まで再現することはできません。
あの頃のモダン・ジャズが好きで、かつウクレレを愛する僕のような人間からみると、この時代に作られたウクレレのジャズ・アルバムというだけで、他には代えられない価値を持った作品となるのです。

ジャズ・ジャイアンツの多くが他界した今でも、ライル・リッツは健在でウクレレを弾いています(途中で、ベーシストとして活躍した時期を挟みますが)。
ベニー・チャン、バイロン・ヤスイなど、いまハワイでジャズ・ウクレレを演奏する名手たちは、明らかにライル・リッツから影響を受けているといっていいでしょう。メインランドのウクレレシーンのキーパーソンであるジム・ビロフも、ライル・リッツのファンであることを公言しています。
そのジム・ビロフが編集したライル・リッツの教則本「Jumpin’Jim's Ukulele Masters: Lyle Ritz Solos」は、多くのウクレレ愛好家にとって、コード・ソロを学び楽しむための貴重な教材となっています。僕も、この本を読んで勉強しました。
ライル・リッツはさまざまな経路を通じて、ウクレレの世界に、大きな影響を与え続けていると思うのです。
(文中敬称略)

このページの更新日:2014年10月30日
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