ライル・リッツ研究

(3)楽譜とDVD


レコード・CD紹介」に続き、こちらではライル・リッツがフィーチャーされた楽譜集とDVDを挙げてみます。

楽譜集


オレンジ本
Jumpin' Jim's Ukulele Masters: Lyle Ritz
(Jim Beloff著、Flea Market Music, 2000)


ライル・リッツの名を冠していますが、正確にはFlea Market Musicの経営者であるジム・ビロフ(Jim Beloff)の著。ただしライル・リッツが監修的な役割を果たしているようで、付属CDもライル・リッツによって演奏されています。スタンダード曲のメロディ譜にコードがつけられているだけですが、そのコードがJazzyでスパイスが利いています。また、スタンダード調弦ウクレレのコード・フォームだけでなく、ライル・リッツが採用しているDGBE調弦のコード・フォームも記載されており、付属CDには伴奏として2タイプの調弦のウクレレが左右チャンネルに分かれて入っています。
曲集の最後に収められている「Fly Me To The Moon」だけがライル・リッツらしいコードソロの譜面となっているのは、次作への「布石」でしょうか。


青本
Jumpin’Jim's Ukulele Masters: Lyle Ritz Solos
(Flea Market Music, 2002)

ライル・リッツのコード・ソロを本格的にとりあげた曲集で、彼の奏法を研究するためには欠かせない一冊。 "Signature song"である「Lulu's Back In Town」や難曲「Ritz Cracker」、彼がバーニー・ケッセルの前で演奏しVerveでアルバムを作るきっかけを作った「Where Or When」、映画「When the Line Goes Through」のために書いた「Time Has Done A Funny Thing To Me」など、充実した内容の曲集です。ハイG(もしくはDGBEのハイD)調弦を前提にしています。付属CDはベースが加わり、それ自体鑑賞に堪えうる出来栄え。「Time Has Done A Funny Thing To Me」の演奏では、映画と同様にボーカルのShelby Flintが参加しています。


Lyle Lite
Jumpin' Jim's Ukulele Masters: Lyle Lite
(Jim Beloff 編、Flea Market Music, 2008)

前作「Lyle Ritz Solos」は中級上位〜上級者向けの曲集ですが、こちらはずっと易しい内容になっています。もう一つ大きな違いは、この曲集ではライル・リッツがいつも使うハイG系の調弦(実際にはハイDのDGBEが多い)よりも、むしろローGを意識したアレンジになっていることでしょう。実際、付属CDでライル・リッツは珍しくローG調弦のウクレレを弾いています。それに加えて、「Beautiful Dreamer」や「ブラームスの子守歌」などジャズでない曲も含まれていることもあり、ライル・リッツ「らしさ」が薄いのは否めませんが、初〜中級下位者あたりを狙った曲集と考えれば妥当なところなのだと思います。


DVD


Lele's Style
Lyle's Style
(Hal Leonard, 2009 / 日本語対訳書付版:ヤマハミュージックトレーディング)

ライル・リッツの大ファンだというFlea Market Musicのジム・ビロフ氏は、さまざまな曲集、あるいはCDを企画してライル・リッツのウクレレ音楽を世に出した功労者ですが、このDVDを企画したのも彼。上記「Lyle Lite」に沿ったレッスン的内容と、ライル・リッツへのインタビューから成ります(聞き手はもちろんビロフ氏)。「Lyle Lite」の付属CDと同じく、ローG調弦のウクレレを使っています。ライル・リッツがじつに生真面目な音楽家であることが伺えるDVDです。オリジナル曲「Bb Blues in C」を愛娘・エミリーと演奏するほほ笑ましいボーナス・トラック付き(エミリーさん、なかなかやります)。


Ukulele Legends
UKULELE LEGENDS IN CONCERT
(有限会社のほほん、2012)

2010年2月10日にホノルル・アロハタワーのウォータフロントステージで行われたコンサートを収録。ライル・リッツのほか、オータサン、エディ・カマエが出演。また、2012年12月に103歳で世を去ることになるビル・タピアが、自宅から映像出演しています。ライル・リッツは、じつは当初ステージに出る予定だったビル・タピアの代役として出演したらしい。名手のベニー・チョン(Uke)、バイロン・ヤスイ(Bs)と組んだトリオ編成の演奏はじつに楽しげで、アドリブの交換も素晴らしいです。ライル・リッツが中心となっているコンボのライブ動画は、まとまったものとしてはおそらくこれが唯一ではないでしょうか。サザンオールスターズの関口氏率いる(有)のほほんの企画・販売。


このページの更新日:2014年10月30日
飯塚英のホームページ>ライル・リッツ研究